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左翼は偽善者、保守派は正義

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だよね?

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翌6月12日の土曜日、私は荒川教会の土曜祈念で大祓いを頂いている最中
「大平はサンファンのサミットに行くべきだ。ただ三木総理と同行すべきではない。出発と帰国の時間をずらせばよい」
という思いが浮かんだ。
翌日の日曜日の夕方6時頃、旧友の一人に電話をすると
「大平蔵相のサンファン行きは是認しよう。だが三木総理の太刀持ちではまずい。日程をずらせばいい」
と私が考えたと同じようなことをいった。私は自分の思いが裏打ちされた思いで、さっそく瀬田の大平邸に電話した。
「三木総理とは同行せずサンファンに行くべきだ。出発はズラし 帰国も別にせよ」
大平は気のない返事をした。
翌週の日曜日、朝刊を見ると「河野洋平ら六人が自民党を脱党す」と各紙はトップに掲げていた。
〈やったな〉と思った。こういうのが “日曜日の驚愕” というのだろう。
昼の2時すぎ、宏池会で大平と会うと
「サンファンに出る、といったら三木はホッとしていた。麦価問題の決定があるので日程は一緒にならぬといっておいた」
といい
「帰りはどうしようかと思っている。大蔵委員会があるのだが」
と考えこんでいた。

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三木首相がホッとしたのは、大平が蔵相をやめると思っていたからだ。
鈴木善幸と会うと、私に向かって
「福田の後に政権が大平にくるのか」
と聞いた。鈴木も大平の様子が変わってきたのを感じたのだ。
「よく判らない。大平が人事権を押さえて総裁代行の幹事長になればよいのだが」
「大平にその意思があるのか」
「本人は政治家をやめたがっているのではないか……」
「大平の真意を確かめてくれ」
鈴木はこういった。私は大福間のことについては鈴木に対しても慎重で、あまり話したくなかった。事実、当時の大福間には確定したことなど何一つないのだ。たとえ色々約束があったにしろ 保守政界では力の背景がなければ、約束したことなどいつでも崩れてしまうことを私はよく知っていた。
この頃、大平の心境はかなり動揺していたらしく、何度も考えが変わった。
6月17日、私が大蔵省の大臣室で話をしていると
「灰色高官の公表に反対だ。灰色高官は作られた世論だからだ」
といい出した。なんでも ある若手の学者と同行して講演に行った時、洗脳されたらしい。
「学者に弱い大平」がここではっきり現れてきた。
私は心中大いに不満だった。

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「大平さん、あなたがそれをいえば一発で政治生命を失ってしまいますよ。田中角栄の盟友だと信じられているあなたが、灰色高官は作られた世論などといえば一般の人々は何と思うでしょう。この問題はこれから最大の政治課題になるはずです」
私はそういったが内心がっかりしてしまう。
「おれは今まで何をしてきたのだろう。どうして大平はすぐ田中に甘い判断になってしまうのか。人間の運命はその人の性格の所産だというが、この人も自分の性格に動かされている」
と思って酷く気が重くなった。
後で私はこのことを旧友に披露すると「いって良いことと悪いことがある。大平にはそれが判らぬのか」「学者を使うな。学識を使え」と散々であった。
私はこれで問題は終わったと簡単に考えていたが、ほどなくして大平の考えの背後に
「灰色高官、灰色高官と何度も繰り返しているうちに、いつかこの言葉が空洞化して国民は麻痺してしまう」
という田中周辺の計算があることに気付いてギクリとした。
私と接触した学者グループは
「国民はそれほど甘くない」
という見方だったが、灰色高官の空洞化は確かに実現の可能性はある。私はこのことが不安になり妙に悲しくなってきた。

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保守派は悪代官、左派が正義

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6月22日、東京地検、警視庁は全日空の沢雄次、青木久頼、植木忠夫らの幹部、丸紅の大久保前専務らを偽証罪、外為法違反で逮捕した。新聞は一面全部を潰して大々的に報道した。いよいよロッキード事件の捜査が水面下から顔を出し 本格化してきた。
地検の狙いはもちろん全日空でも丸紅でもない。明らかに政府高官だ。捜査の一番入りやすいところから入っているだけだ。「ここ一ヵ月だな」と私は思った。造船疑獄事件で佐藤栄作と池田勇人が狙われた時も これと全く同じパターンであったことを私は憶えている。
6月24日、私は「宏池会に来てほしい」という大平の伝言を聞いて出かけて行った。大平はサンファンに行く前、挨拶のため椎名と会い、記者懇談会を終えたばかりだった。私の顔を見て
「今夜7時、瀬田に来てくれ。夕食を共にしよう」
という。私は疲れていて行きたくなかったが「何かあるな」と思って行くことにした。
三木首相はこの日、日米首脳会談と七ヵ国首脳会議のためすでに成田を出発していた。
約束の時間に瀬田に着いたら 大平はテレビの前で7時のニュースを見ていた。食卓にはすき焼きが準備され ビールが一本添えてある。

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テレビの音が邪魔にならぬかと思ったが
「要するにあなたが政局の中心だ」
というと
「君がそのようにりきむのなら嫌になる。話したくない」
と突然、大平が怒り出した。「しまった」と私は心の中で思った。「りきむ」という言葉が酷くこたえた。私は即座に心の中で祈念しつつ、話題を全部かえて “政治の話は一切棚上げにしよう” と思い信心の話に切りかえてしまった。
「あなたは疲れているのじゃないか」
と私は話した。私がこの大平の部屋へ入ると、大平は私の顔を見て「体はどうか」と聞いた。昼間、私が大平に「人と話をしたのでちょっと疲れたし 顔がひきつっている。疲れやすくなっている」といったのを覚えていたのだろう。
「私は今少し異常な状態なので “りきみ” が出たのだ。私の言葉は繰り返しが多くなっている。それがあなたの気に障ったのかもしれない」
私がこういうと、大平は気を取り直したらしく静かな口調で次のようにいった。
「自民党はガタがきて、とても立ち直らないのじゃないか。少しぐらい修理をしても駄目だと思う」

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「そう、あなたは何度もやってみたが、いつも同じ結果しか出てこないので嫌になっている。空しいのだ。私もこれと同じことがあった。心臓発作が起きて虎の門病院に入院した時だ。白いシーツの上に横たわった。寝台の上に一人寝ながら、ああこれで一切の煩わしさから抜けられる。私はいつ死んでもいい、と思った。するとひどく安らかになった。 “何か宿題のない休暇に入ったような、のびのびした思いだった” 。このことは今も忘れない」
「一、二年の後、私はこの心境を心の師(金子政司先生)に話したら『それは禅宗の “無” に近い状態だ』と教えられた。『だがまだ奥がある。この無に近い状態の中から、私はこれをしたい、どうしてもこれをさせてもらわずにはいられない、という願いが生まれてくるものだ。あなたはいい心の状態になったが、もう一つ奥があることを忘れるな』といわれた。私はこれをいまだに忘れない」
「神徳(神の働き)を頂くには二つの方法がある。あなたは人に隠れて徳を積んでいる。誰にもいわずに行動し、誰にも愚痴不足をいったことがない。これが徳積みになるのだ。これをわれわれの方では氏子あっての神の徳という」

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「努力して努力して、辛抱強く積み上げてゆくやり方だ。このやり方は、どうにも結果が出てこないとき精根ともに尽き果てる、という状態になる。この時、ある空しさが出てくる。この空しさは埋めようがない。そこで、もうやめた、となる。この状態はまだまだ人を対象にしている。つまり現象や相手を見て、こちらの努力を決めている」
「もう一つの方法がある。これは、こちらが空っぽになる方法だ。わが心が神に向かう、という行き方だ。この時、こちらの心が空っぽになっておれば、この心の中に必ず別のもの(私の意識と違うもの)が入ってくる。
自然(神)は真空を嫌う、という物理学の原則があるが、これと同じで心が空っぽになればなるほど、あなたの心の中に “あるもの” が入ってくる。これが神の心だ。この時あなたは “こうせずにはいられなくなる” 。こういう道を われわれは神あっての氏子、という。
全力を尽くし 精根ともに尽き果てた時 空しくなる。このとき心は無に近い。この無の状態を神に向ければ、あなたの心の中に “どうしてもそうせずにはいられぬもの” が出てくるはずだ。
これは別の表現でいうと神に使われた状態だ」

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「この時、自分ではそれほど大変なことをしているつもりはなくても、いつの間にか大変な反響をまきおこす、というような働きをしてしまう。
大平さん、あなたは時々そういう働きをさせられる時がある。大阪行きの時がそうであった。大阪遊説であなたは、身ぶり手ぶりで熱弁をふるった。『まるで大平の人間が変わったようだ』と新聞に出ていたのを見て、私も私の心の師も、どれほど喜んだことか。
これはあなたが使われた状態に、知らずになったからだ。おそらくあの大阪行きの帰りには、あなたは一つも疲労を感じなかった、いやむしろある種の充実感を味わって爽やかにさえなったはずだ。
政党は一つのオーケストラだといい、バイオリンだけが独奏してもだめだといったのは、派閥の働きにある種の方向を与えるものだ。おそらくこれは党内各派の辿るべき理念を示すものだろう。こういうことがいえたのは、あなたが使われたからだ。大平さん、あなたはこういう状態に意識的になれるようになればよい」
黙って聞いていた大平は、このとき言葉をはさんだ。
「大阪で思い出したが、森下泰は途中で会合があるからと中座した。どうやら河野洋平一派の会合に出たらしい。

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『今はもう大平や福田の時代ではない。宮沢喜一、小坂徳三郎、河野洋平の時代だ』という議論が横行しているが、森下はこの考えにかぶれているのだろう。これらの人々にはずいぶん世話をしてやったんだが……」
大平は珍しくこぼした。私はこれに答えて
「大平さん、あなたはこの人々を変えようとしている。だが変えようと思っても変わらない。これをどうするかだ。子供が病気になった。このとき親はどうするかだ。ままよと思って放って置くような心になって信心してやる。こうなるとおかげはこの子供が受けて病気が治る、となる」
「こちらが天地の働きと一つになる。すると私がおかげを受けるだけではない。私とは別個な人格としての子供がおかげを受ける、となる。もっと端的にいえば こちらが変われば相手が変わるのだ。相手が変わらないのは、こちらの世話の仕方が原因ではない。こちらの心が変わり切っていないからだ。相手はこちらの従属変数にすぎない。相手に力を加えてこれを変えようとしても 変化はしないだろう」

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