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そして小学4年の12月に「運命のとき」がきた。幼なじみのなかで一番、仲のよかった若狭陽介さん(22)が、軟式チーム「多聞東少年団野球」で本格的に野球をすることを決意。桜井は草野球を続けることを希望したが、若狭さんから「みんなで一緒に野球やろう。知り合いの子もいるから行こう」と熱心に誘われ翻意した。
その入団初日に“事件”が起こった。キャッチボールを見ただけで、当時の監督がエースに指名。小学1年から続けてきた他の選手は困惑したが、うなりをあげる速球を前に納得するしかなかった。以降、神戸市内の大会で数々の実績を残し、中学校へ進むことになる。
その際には、親友の父からの助言が、再び桜井の運命を変えた。兵庫県でトップクラスの硬式チームから勧誘を受けたが、コーチをしていた若狭さんから「お前は肘を痛める傾向がある。投手をするなら中学は軟式でやれ」と言われた。その一言で、地元の多聞東中学の野球部でプレーすることを決意した。
結果的にこの決断が、後に関西学生野球リーグでタフネスぶりをいかんなく発揮する礎となった。その中学時代に桜井は、再び決断を迫られることになる。
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巨人からドラフト1位で指名された立命大の桜井俊貴投手(22)が、24日午後5時から行われる関西学生野球リーグ・同大戦(わかさスタジアム京都)に「9番・投手」で先発出場する。
即戦力として期待される最速150キロ右腕は、22日のドラフト後初登板へ向けて「自分のピッチングをしたいです」と気合を入れていた。
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巨人からドラフト1位指名された立命大の桜井俊貴投手(22)が24日、ドラフト後初登板を完投勝利で飾った。関西学生野球リーグ・同大戦に先発。初回に自らの悪送球が絡んで失点したが、尻上がりに調子を上げて9回7安打2失点7三振。最速147キロの直球を軸に126球の熱投で自慢のタフネスぶりを見せつけた。
最後までエンジン全開だった。9回2死一、二塁。桜井は129キロのチェンジアップで最後の打者のバットをへし折り、二ゴロに打ち取った。「全然疲れていないです。スタミナには自信があるのでプロでも最後までマウンドにいれるようにしたいです」。1年ぶりのナイトゲームで照明に目が合わず「視界がボンヤリしてサインミスがあった」。目が慣れた4〜6回は完全投球で、8回も3者三振。両親が見守る中、投球を立て直した。25日は登板しないが、1勝1敗となった場合は中1日で26日に先発する。
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試合前に“プロの洗礼”を受けていた。いつも通り球場周辺でウォーミングアップしていると、ファンからサイン攻めにあった。名前入りのTシャツを脱ぎ、学生コーチから借りたサングラスで変装したがすぐに周囲は人だかり。球場内で体を動かした。「自分のペースでできなかった。対応力がないと今後、活躍できない」とうなずいた。
今週中には巨人から指名あいさつを受ける予定。高橋由新監督の下、プロのスタートを切ることになり「小さい頃から見ていた巨人の顔。コントロールと球のキレを見てもらいたいです」と声を弾ませた。
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中学生になった桜井にとって、野球は「のんびりやれたらいい」という程度のものだった。それでも地元・多聞東中ではエースに。そして中学最後の大会で転機が訪れた。1回戦で苦戦したが終盤に逆転。そこから「あれよ、あれよと最後まで行った」(桜井)と決勝進出を果たした。決勝では敗れたが、このときの投球が、報徳学園や神戸国際大付など有力校の関係者の目に留まった。
野球で行くか、勉強での進学か―。桜井の出した結論は「文武両道」だった。そこで野球部顧問から勧められたのが北須磨高だ。県内有数の進学校であり、「監督が熱心な方だし、お前に合う」と助言された。当時の桜井の学力では合格するかギリギリのライン。その日から勉強に没頭したが、推薦試験で一度は不合格。母・幸子さん(53)は「ワンランク下の高校か私学を考えた」が、本人の意志は固かった。以降は、さらに勉強時間を増やし、本試験で見事に合格した。
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順調だった野球人生が、北須磨高入学後、暗転した。練習試合では打ち込まれ、登板機会も減った。もともと、寡黙なタイプだったが、学校の授業中も発言は少なく、ひっそりと高校生活を送ることになった。だが、2年夏の兵庫県大会で2試合連続完封。3年夏には、甲子園常連の名門・育英を4安打完封するなど「公立の星」と騒がれるまでになったが、ある授業を担当した先生は、最後まで桜井の顔と名前が一致しなかったという。
恩師の徳山範夫監督(51)は「投げたらすごかったが、普段は話さない子。ただ、練習は手を抜いたことがなかった」と話す。監督の問いかけにも「はい」「いいえ」しか答えず。自分から話しかけたこともなかった。ただ、与えられたメニューを黙々とこなしたことが、桜井の肥やしになっていた。
立命大へ進学後も厳しい練習を繰り返し、入学時は135キロだった最速は150キロまでアップ。関西学生野球リーグを代表する投手に成長した。巨人からドラフト1位指名された直後の会見では「最終的には巨人の顔になれるようにしたい」と言い切った。その目標も、桜井なら努力の末にかなえるはずだ。
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22日のドラフト会議で、巨人から7位指名を受けた東海大・中川皓太(こうた)投手(21)が25日、同校合宿所で長谷川スカウトから指名あいさつを受けた。最速145キロ左腕は「持ち味はキレのあるストレート。少しでも早く1軍に上がれるようにしたいです」と笑顔を見せた。
4年秋の今季は首都大学リーグ戦7試合に登板し、5勝1敗、防御率0・85。最高殊勲選手、最優秀投手に輝いた。チームメートの吉田侑樹投手(21)は日本ハムから7位で、渡辺勝外野手(22)は中日から育成6位でそれぞれ指名された。「2人に負けないようにやりたいです」とプロの舞台で勝負することを心待ちにしていた。
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巨人のドラフト7位、東海大の145キロ左腕・中川皓太投手(21)が25日、神奈川・平塚市内の同大合宿所で長谷川スカウトから指名あいさつを受けた。大阪出身だが両親が大のG党。幼少期から巨人戦をよく見てきた。「松井さんや高橋由伸さんの活躍する姿をテレビで見てきた。同じチームに入れるのはうれしい」と目を輝かせた。
地元の友人からは祝福のLINEがたくさん届いた。「『おめでとう』とみんな言ってくれました」と顔をほころばせたが、やはり大阪では虎党が多いわけで…。「『阪神戦の時は容赦しないよ』とも言われました」と頭をかいた。それでも「阪神ファンの応援はすごいですが、負けないようにやっていきたいです」と早くも虎狩りを誓った。
長谷川スカウトが「投げ方は(中日の)岩瀬のような感じ。球速以上にボールの質感がいい」と評するサウスポー。「プロでも先発をやりたい。早く1軍に上がれるよう頑張ります」と胸を高鳴らせた。
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◆中川 皓太(なかがわ・こうた)1994年2月24日、大阪・富田林市生まれ。21歳。山陽高(広島)では甲子園出場なし。東海大ではリーグ戦通算31試合で16勝1敗、防御率1・31。183センチ、81キロ。左投左打。
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巨人からドラフト1位で指名された立命大の桜井俊貴投手(22)が25日、“侍魂”による20年ローテ死守を誓った。法学部に在籍する150キロ右腕の卒論のテーマは、鎌倉時代に武士のためにつくった法律「御成敗式目(ごせいばいしきもく)」。中でも、土地を手に入れるためには20年支配すること、と制定された8条に注目した。
兵庫の進学校・北須磨高を出た秀才右腕の成功の定義は異質だった。昨年から「法律の歴史の中でメジャーなものを深く学ぼう」と「御成敗式目」を卒論の題材に選んだ。「鎌倉時代は20年でその土地が自分のものになっていたんです」。それをプロ生活に置き換えた瞬間、今季限りで現役を引退した大投手が頭に浮かんだ。
元中日の山本昌だった。「本当に長く活躍されていた。山本昌さんのように常に活躍できるようにやっていきたいです」。20年を大きく上回る32年間プレーし、今季はプロ野球史上初めて50代での登板を達成。大昔の法律と伝説左腕から、プロとして生きる指針を決めた。
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