じわじわ追いつめられた。根比べの結末はまさかの押し出しとなり、菅野は肩を落とした。４回２死満塁で、打席には投手の小川。３球で簡単に追い込みながら、ファウルで粘られ、フルカウントからの１１球目が高めに外れた。「抑えなければいけなかったが、粘れませんでした。技術不足です」。プロ３年目で、初めて投手に与えた四球。勝負どころで痛恨の制球ミスだった。
　魔の４回について「中村を歩かせたのが良くなかった」と８番打者への四球を反省したが、小川への投球で一気にリズムを乱した。続く比屋根には初球から３連続ボールで最後は押し出し四球。川端にも３ボールとして５球目を右前適時打された。この回だけで５１球を要し４失点、今季最短４回ＫＯ。降り続く霧雨が涙雨のように映った。
　調子は悪くなかった。初回に絶好調の山田から直球で空振りを奪うなど、球威があった。３回２死一、二塁でも、山田を内角１４６キロの直球で見逃し三振。力強く右拳を握った姿には気迫が満ちあふれていた。それだけに、原監督は「調子は非常によく見えた。あれ（小川への四球）でリズムを崩した感じはした」とエースらしからぬ投球を嘆いた。

　２０日の前回登板は、阪神・藤浪との投手戦を１失点完投で制した。夏場に入って１５０キロを計測するなど、状態が上がっていたのは間違いない。「まだ自分の中では９０％。１００じゃない。気持ち的にそう思っておくことが大事だと思う。勝負は９、１０月なので」。強い気持ちでチームを支えるが、これで９勝９敗の貯金ゼロとなった。
　プロ入り以来、神宮では６登板で０勝４敗。鬼門での初勝利はまたもお預けとなった。「後ろばかり向いていても仕方ない。前を向いていきたい。今回の結果を受け止め、次はしっかり自分の投球をしたい」。顔を上げ、苦境を打破していくしかない。

　ピッチャーが長い回を投げ抜くために必要なことは、何ですか？　西武担当をしていた数年前、そんな質問を当時の渡辺久信監督にぶつけた。現役時代は２７７試合に先発し、１０５完投をマークしたナベＱ監督は、タバコの煙をくゆらせ、答えてくれた。
　「『憩いの時間』を作ることだよね。１番から９番まで、全員に全力投球していたら、身が持たない。上位やクリーンアップに力を注いで、下位ではうまくペースを落とす。だからスコアボードを見ながら、下位を『憩いの時間』と呼んで、ペース配分していたんだ。名投手はみんなそうだよ」

　今夜の神宮。０―０で迎えた４回２死一、二塁のピンチ。菅野と小林のバッテリーは８番の中村を四球で歩かせ、９番・小川との勝負を選んだ。この時点でライアンの打率は１割５厘。無失点で切り抜けられる自信は、十分にあったことだろう。
　だが、小川には数値化されない“武器”があった。それはほとばしる勝利への執念だ。満塁の好機を、絶対無駄にはできない。食らいつくんだ―。

　スライダー攻め。菅野は３球で１ボール２ストライクと小川を追い込んだ。だがその後、ファウルで５球粘られたのは想定外だったろう。フルカウントからの１１球目、カットボールは高めに浮き、痛恨の押し出し四球に。そこから崩れて４失点。試合は大きく動いた。
　負ければ自力Ｖ消滅もある大事な一戦。菅野の登板に懸ける思いは、並々ならぬものがあったと感じる。それは十二分に伝わってきた。それなのに、投手の９番打者へほんのわずかなスキを見せてしまったのは、菅野がリーグトップの完投数を誇る、経験豊かなエースであるがゆえ―とも思うのだ。
　いや。菅野だけを責めるのはフェアじゃない。初回から４回まで毎回、打線は得点圏に走者を置いた。どの打者でもいい。小川のような泥臭い打撃をしてくれていたら―。
　猛虎も負け、首位とは３差のまま。まだツキはある。ラストスパートへ、この１敗から学ぶことは多い。巨人よ、奮い立て。

原も菅野は神宮苦手なんだからマウンドが合わないとか球場が狭いから一発を警戒しすぎてストライクを投げられないとか考えてアドバイスしないのかな？
アドバイスしても神宮勝てないなら出さない方がいい。

　　　■■■■
　■■■■■■■■
■■■■■■■■■■
■■　　■■　　■■
■■■■■■■■■■
　　■■　　■■
　■　　■■　　■
■　　　　　　　　■

ふはははは

　菅野（巨）が、神宮球場のヤクルト戦で黒星。神宮はプロ入り以来、過去５度登板し、０勝３敗と相性の悪い球場だったが、６度目の登板でも白星を手にできなかった。
　この日は４回に一挙、４失点。満塁の場面で投手・小川に、１１球目を押し出し四球（１０球以上粘れて与四球は３度目）の後、比屋根にも連続押し出しを与えた。今年６月１０日に日本ハム戦で、大谷に四球を与えたが、この試合の大谷は、指名打者。投手で出場した選手への与四球は、小川が初めてだった。
　また、菅野の満塁での通算成績を出すと（犠…犠打、犠飛、Ｂ…四球、Ｄ…死球）
　　打―安本犠ＢＤ打者
13年19―６　１１０　21
昨年８―２　０００　８
今年13―１　０�A０　15
　過去、押し出しは13年５月４日の広島戦７回、丸への１度だけ。自身初の投手への押し出し、２連続押し出し四球で、黒星を喫した。

　（菅野について、４回は）８、９番だからね。四球っていうのは考えてなかった。投手は簡単に抑えないといけない

　エースが９月反攻の旗手になる。１日のヤクルト戦（富山）に先発する巨人・菅野智之投手（２５）が３１日、強力打線にリベンジして、チームの勢いを加速させることを誓った。同カードは今季３戦３敗で、前回８月２６日も神宮で４回４失点ＫＯ。「意地を見せられるように頑張りたい」と言い切った。ヤクルト戦の後は、火曜日に阪神戦が２試合。ライバル球団を封じ、Ｖ４へ突っ走る。
　仲間の巻き返しに勇気をもらった。同時に、菅野の闘争心に火がついた。先週、神宮では自分自身のＫＯもありヤクルトに３連敗。だが、本拠地で中日に３連勝して８月を締めた。「昨日の勝ち（５点差逆転）は大きい。流れが変わってるのかなとも思うので、乗っていけるように、勢いを止めないようにしたい」。９月初戦の登板に向け、決意を示した。

　相手は前回４回４失点ＫＯを食らったヤクルト。今季の対戦はすべて神宮で３戦３敗、防御率６・８９。セ５球団の中で唯一、勝利がない。「このままやられっぱなしでシーズンを終わるのか、やり返して終わるのかでは、今後の戦いも変わってくる。意地を見せられるように頑張りたい」。好調の川端、山田の前にいかに走者を出さないかが、ポイントになる。
　ヤクルト戦の後も大仕事が待っている。現在、１ゲーム差で追う首位・阪神とは８日から甲子園で３連戦、２２日から東京Ｄで２連戦。順調に中６日で回ればいずれも登板が可能だ。「開幕投手を任されて、（常に）そういう戦いを意識してやっている。キャンプからそういう覚悟でやってきた」と厳しい試合は大歓迎。心の準備はできている。
　昨年は８月に右手中指の負傷で１か月離脱。１０月は右肘を痛めてＣＳ最終Ｓを欠場した。今年は故障こそなかったが、８月は１勝３敗に終わった。月が替わって心機一転。「昨年、おととしと夏場に力を発揮できなかった。（上位球団との直接対決は）これ以上ない（借りを返す）チャンスだと思って力に変えたい」。勝負の９月に向け、目をギラつかせた。