巨人は２９日、来季新設する３軍のコーチングスタッフを発表した。トレーニングコーチは後日発表する。
　なお、２、３軍のファーム全体の打撃部門を指導するため、前楽天１軍打撃コーチの田代富雄氏（６１）が「ファーム巡回打撃コーチ」に就任する。
　【３軍】
　監督　川相昌弘（１軍ヘッド）
　投手　阿波野秀幸（２軍投手）
　打撃　金城龍彦
　内野守備走塁　円谷英俊（振興部スタッフ）
　外野守備走塁　後藤孝志（２軍内野守備走塁）
　バッテリー　秦真司（１軍バッテリー）
　※カッコ内は前職。

　ミスターが「勝つ！勝つ！勝〜つ！」ならヨシノブは「走れ！走れ！走れ〜っ！」―。巨人・高橋由伸監督（４０）が３０日、地獄の秋季キャンプを予告した。Ｇ球場で秋季練習を視察した新指揮官は、１１月７日からの宮崎キャンプ（サンマリンスタジアム宮崎）でも、特に若手は徹底的に走り込ませる考えを明かした。“巨人の星”を目指し走り抜いた先にＶ奪回が待っている。
　大田が、岡本が、小林が、次々とＧ球場の芝生にへたり込んだ。傍らではニコニコと高橋監督が見つめていた。全体練習の最後に若手に課されたのは、鬼のインターバル走。８０メートルを１５秒以内で走り、１５秒の休息を挟んでさらにダッシュ。１０本１セットを３セットこなした。
　「きつかった。死にそう」（大田）「足がやばいです」（岡本）と、みな息も絶え絶え。終わった直後にはスタンドのファンから拍手が沸き起こったほどだった。
　新監督は、こともなげに振り返った。「ランニング？　強化だから当たり前でしょう。各コーチが考えてくれている。当然、（シーズンになり）ゲームが始まれば、よほどじゃないと（たくさん）走ることはできない。今は強化に十分時間を使える時なので」

　伊藤トレーニングコーチは「反復練習に耐えられる体力をつけ心拍数を上がりにくくさせ、回復力を増す２次的効果が狙い」と説明した。２９日は坂道ダッシュを消化したが、この日はメニューがさらにきつくなった。「当然、宮崎に行っても走ろうと思います」と、指揮官はさらなる厳しい走り込みを予告した。
　巨人史上の地獄キャンプといえば、長嶋茂雄監督（現巨人軍終身名誉監督、報知新聞社客員）が第１次政権時の７９年秋に行った「伊東キャンプ」があまりにも有名だ。３年連続で日本一を逃し、若手の底上げが必須となっている今のチーム状況は、当時と似通っている。「（走るのは）基本中の基本。僕も若い頃は好きじゃなかったが、４０歳手前で（大切さに）気づいた。走ることで、打撃も守りも生きてくる」。技術と体力、どちらが欠けても一流にはなれない。現役時は、チームでも屈指のランニング量を誇っていた指揮官だけに、説得力が違う。

　２位に終わった今季は、阿部、村田を始め、レギュラークラスにも故障が目立った。若手を含め、頑強な体という土台を作り直すことが再建への第一歩となる。「今年の屈辱を忘れてほしくないからな。それを晴らすため、しっかり走って、強い体を作って個々のレベルを上げる。きつくなると言ったらきつくなるのかな」と村田ヘッドはニヤリ。走り、振って、投げまくる。日本一へ、ハードな“序走”が待っている。
　◆巨人の歴史に名高い鬼キャンプ
　▽伝説の茂林寺特訓　１９３６年、職業野球リーグ夏季大会で惨敗したことを受け、藤本定義監督が群馬・館林市の茂林寺・分福球場でキャンプを実施。指揮官自らが「選手が倒れるか、わしが倒れるか思い切って対決する」と進退をかけて臨んだ。「茂林寺の千本ノック」と呼ばれた猛練習で鍛え直し、秋季大会を制覇した。

　▽地獄の伊東キャンプ　シーズンを５位で終えた７９年のオフ、長嶋監督は静岡・伊東に若手精鋭を集め、４３年ぶりに秋季キャンプを再開。指揮官は冒頭のミーティングで「いつまでもＶ９の威光に頼っていては、没落するだけだ。今の巨人は王も張本も長嶋もない。君たちが明日から地面にはいつくばるような猛練習を重ねて新しい巨人を作る以外ないのだ」とゲキを飛ばした。
　▽２６日間無休キャンプ　５位でシーズンを終えた０５年、再建を託された原監督は、秋季キャンプでナインに猛特訓を課した。「時間にとらわれる必要はない」と時間無制限のデスマッチモード。休養日にも夜間練習を行い、実質２６日間無休だった。

　巨人から育成ドラフト８位指名を受けたＢＣリーグ・石川ミリオンスターズの１８６センチ右腕、長谷川潤（２４）が３０日、金沢市内で指名あいさつを受けた。柏田貴史スカウトら３人が訪れ、将来性を高く評価。今オフはパワーアップを目指し、約１か月で体重９キロ増に成功した長谷川。来春はＭＡＸ１４５キロを達成し、支配下選手登録を目指す。
　巨人で活躍した元左腕の柏田スカウトら３人から、これからの予定などの説明を受けた長谷川。今後は仮契約の後、１１月２０日前後に本契約を交わし、同月２３日のファンフェスタに参加する予定となっている。緊張した面持ちで姿を見せた長谷川は「本当にプロの世界に入れるんだなと、実感しました。１日、１日を大切に過ごしていきたい」と決意を新たにした。

　入団に向けて、準備も万端だ。今季リーグ戦は９月１６日に終了したが、その後、肉体改造に着手。厳しい走り込みのほか、元日本ハムの多田野数人コーチ（３５）からトレーニング法を学び、ほぼ毎日、ジムに通った。「１軍で活躍するため、球速１４５キロは必要。家では、ひたすらご飯を食べました」。朝は１合、夜は４合のご飯を食べた。シーズン後は７４キロだった体重が、わずか１か月あまりで８３キロと急増。本格的な投球はこれからだが、大きな手応えをつかんでいる。
　１８６センチの長身サイド右腕として、高い評価も受けた。９月中旬の入団テストでは、しなやかなフォームから、速球、スライダーの切れを見せつけ、スカウト陣が全員一致で指名候補に推薦。現在はＭＡＸ１４０キロだが、柏田スカウトは「球速はまだ上がりますよ。体の使い方を覚えれば、１４５キロを出す可能性もある。１年目から勝負してほしい」と期待を込めた。

　今後、本契約を終えれば、来年１月からは合同自主トレも始まる。「育成の一番下なので、１日でも早く支配下登録を目指したい。今後もウェート（トレーニング）は続けていく」と長谷川。さらなるパワーアップで、念願の１軍マウンドに上がる夢を実現する。
　◆長谷川　潤（はせがわ・じゅん）１９９１年６月１５日、東京都生まれ。２４歳。成立学園高、金沢学院大。北陸大学野球リーグでは３年春秋にベストナインに選出。１４年にＢＣ石川に加入し、今季リーグ戦は１７試合に登板し、４勝９敗。防御率４．３３。１８６センチ、８３キロ。右投右打。家族は祖母、両親、兄。好物は肉。血液型Ｂ。

　巨人の白石興二郎オーナー（６９）が３１日、Ｇ球場での秋季練習を電撃視察した。高橋由伸新監督（４０）らと言葉を交わしながら、ブルペンにも足を運ぶなど、精力的に練習を見て回った。
　「たまたま時間があったので（練習の）風景を見に来たが、新監督、新体制で選手も緊張気味なのかもしれないね。新しい風のもとで、一生懸命来季に向けて調整している、という印象だった」と満足げな表情で約２時間の視察を振り返った。

　巨人の白石興二郎オーナー（６９）が３１日、Ｇ球場での秋季練習を電撃視察した。激励を受けた高橋由伸監督（４０）は、来季の「打倒ソフトバンク」を宣言した。
　オーナーが自らＧ球場を訪れるのは超異例。大きな期待の表れだ。打撃練習からブルペンまで、高橋監督と言葉を交わしながら見て回った。話題はソフトバンクがセの覇者ヤクルトを４勝１敗と圧倒し、２連覇した日本シリーズに及んだ。日本一奪回へ、来季も最大の障壁となるが「ソフトバンクを超えるチーム？　もちろん作らなければいけない。監督もそのつもりでやっていると思う」と、大きくうなずいた。
　高橋監督も思いを新たにした。オーナーの言葉を伝えられ、間髪入れず言い切った。「期待されていることは分かっている。当然僕自身もそういうところを目指して。まだ始まったばかりだけど、今年日本一になったソフトバンクに勝つことが目標なんでね」