３―０の７回２死一、二塁、アクシデントで降板の西村に代わり登板。満塁とされるも、坂口を外角カットボールで空振り三振に抑えてガッツポーズ。「菅野さんが投げている試合。絶対に勝ちを消しちゃいけないと思っていました」

　６回から４番手で登板して１回無失点。鳥谷、大和から低めの変化球で空振り三振を奪い「落ちついて投げることができました」。

　３点ビハインドの８回から３番手で登板し、２回無安打無失点。今季はルーキーながら開幕メンバー入りし、３３試合に登板。６月から約２か月リハビリ生活を送ったが、再昇格した９月５日の中日戦（松本）から１１試合連続無失点。「１年間通じてプロの世界が分かったので来年に生かしたい。来年はフルで１軍に入れるように」

　今年のプロ野球ドラフト会議が２６日に行われる。早実の清宮幸太郎内野手（３年）は果たして何球団が競合し、どこのユニホームを着るのか。池田駿投手（２４）がドラフト当時のエピソードを披露してくれた。
　昨年のドラフト後、１１月に行われた社会人日本選手権でヤマハを初優勝に導いた池田。ドラフト直前は大会に向けた練習に集中していたという。「特にそわそわすることもなかったですね。緊張感もなくて…。普通すぎますかね」と苦笑いを浮かべながら振り返った。自分の運命を左右する日が近づいても普段通り。左腕の“強心臓”ぶりが垣間見えた。
　大卒の社会人は即戦力と考えられることも踏まえ、下位指名ならヤマハ残留と決めていた。「順位は４位以内で行きたいと思って（ヤマハの）監督と話していました。それで野球部の関係者の方から『５位くらいでならありそうだぞ』と聞いたんです。僕もある程度、上の順位でプロに行きたかったので、じゃあまた来年かなと思っていて」

　迎えたドラフト当日。「全く想像もしていなかった」という巨人から４位指名の連絡が入った。「まさかですよ。ソフトバンクがもしかしたら指名するかもと聞いていたので、ビックリしました」。今年のドラフト１位候補にはヤマハの後輩で１５７キロ右腕・鈴木博志（２０）がいる。「球がめちゃめちゃ速い。どこに行くのか楽しみです」。１年前よりも胸を躍らせている。
　◆池田　駿（いけだ・しゅん）１９９２年１１月２９日、新潟県生まれ。２４歳。新潟明訓高では３年夏の甲子園８強。専大を経て１５年にヤマハ入社。昨秋の日本選手権で優勝に導きＭＶＰ受賞。今季は１軍で３３試合０勝２敗、防御率３・３５。１７４センチ、７１キロ。左投左打。背番号４８。年俸１０００万。

　今季､ヤマハからドラフト4位で入団し､33試合に登板した池田駿(24)は高校時代､数学教師になるのが夢だった｡だから､今でも計算やデータ分析が好き｡暇さえあれば､140キロの球が衝突する時の衝撃を計算したり､サイコロを5回振って偶数が出続ける確率を求めたりと頭を働かせている｡
　さて､ルーキーイヤーは､自分に足りないものを考え続けた1年だった｡脳裏に焼き付いて離れないのが､先発登板した6月8日の西武戦で浴びた満塁本塁打だ｡伏兵の外崎に､苦し紛れに投げた真ん中の直球を狙われた｡この日の敗戦でチームの連敗は球団史上ワーストの13に伸び､｢夢に見るぐらい落ち込んだ｣｡右脇腹に痛みを覚えて､4日後､ファームに降格した｡
　新人左腕はまず､投球フォームを見つめ直すことから始めた｡投球時に踏み込んだ右足の着地点が一塁側方向に流れていたため､上半身主導で脇腹に負担がかかっていたのだ｡そこから約3か月､シャドーピッチングやブルペンでの投球を動画で撮影､理想のフォームを追求した｡

　一軍では､チェンジアップやカットボールに頼り過ぎ､投球の幅を広げることの重要性を痛感させられた｡投球フォームを見直し､上半身と下半身のバランスを意識した｡すると､直球に切れが増し､得意の変化球が生きるようになった｡9月5日の再昇格後は､11試合連続無失点でシーズンを締めくくった｡
　1年目の防御率は3･35とまずまずだったが､満足はしていない｡｢直球を徹底的に磨き直す｣と臨んだ秋季練習は､2日目の10日にブルペン入り｡シーズンの疲れも見せず､高橋監督らが見守る中､直球だけを75球投げ込んだ｡｢来年は相手も研究してくるだろうから､さらに上回らないと｡与えられた所でチームに貢献したい｣｡試行錯誤を重ねながら､チームにとって計算できる投手となるための答えを導き出すつもりだ｡

　マウンド度胸が光った。巨人の池田駿はルーキーらしからぬ思い切りの良い投球で、1年目からプロのレベルに順応した。
　新潟明訓高から専大、社会人野球のヤマハへ進んだ。174センチと決して体格に恵まれているわけではないが、左腕から投じるキレのある直球と、制球の良いカットボールやチェンジアップがスカウトの目に留まり、昨年10月のドラフト会議で4位指名を受けた。直後の11月には社会人のビッグタイトルの1つである日本選手権でチームを初優勝に導き(決勝で先発)、MVPを獲得。即戦力左腕として期待された。
「即戦力と言われるのはうれしかったです。この年齢で獲ってもらえるのはありがたいことなので。球団にしっかり恩返ししたいという気持ちになりました」
　プロ入り後は中継ぎに転向。開幕一軍を勝ち取った。2度の先発を含む33試合に登板し、0勝2敗、防御率3.35。山口鉄也やFAで加入した森福允彦といった実績ある救援左腕が本調子でない中、時には勝ちパターンの一角としてブルペンを支えた。6月にコンディション不良を訴えた期間もあり、「離脱した6、7、8月が……後悔が残りました」と自己評価は厳しいが、チームを救った。

「来年はフルシーズンでチームに貢献したい。変化球に頼らず、ストレートを使った投球ができるように」と意気込む。今年5月には7年交際した薬剤師と結婚。11月には25歳を迎える伸び盛りの左腕。2年目となる来季は、さらに頼もしさを増す。

　ジャイアンツ球場の秋季練習最終クール初日｡いつも以上に気合の入った表情で投球練習をしていたのは､池田投手です｡村田､斎藤両コーチが見守っていたからなのはもちろん､ブルペンキャッチャーの後ろに高橋監督が立っていたからという理由が一番大きいかもしれません…