秋季練習第4クール初日｡11月のアジアプロ野球チャンピオンシップの日本代表､侍ジャパンにも選ばれている田口投手がブルペン入り｡高橋監督が見守る中､捕手を座らせ､伸びのあるストレートを中心に､シーズン中と変わらぬピッチングを見せていました｡

　11年ぶりのＢクラスとなった巨人ナインの心境に迫る随時連載「Ｇ反省と収穫」。第３回は田口麗斗投手(22)。開幕直後の苦しい投球を修正して13勝４敗、防御率３・01の好成績を残した。それでも終盤に失速したため、手応えより反省が多いと強調。シーズン最終登板の悔しさを胸に、さらなる飛躍を誓った。
　野球人生で絶対に忘れない試合の一つになった。田口はシーズン１４２試合目、３位ＤｅＮＡと０・５差で迎えた10月１日の阪神戦（東京Ｄ）に先発。４回３失点で黒星がつき、チームの４位が確定した。９月以降は５登板で１勝２敗、防御率４・82と苦しんだ。

　最後の阪神戦は悔しかったですね。普通の状態で投げられれば良かったのですが、普通じゃなかった。バテなのかもしれないですが、終盤に自分が投げた試合でチームが勝てない時期が続いた。リズムの悪さを作ってしまったのが一番の原因かなと。菅野さんは９月も月間ＭＶＰを取った。自分には最後の執念が足りなかったなと思います

　４年目の今季は26登板で１７０回2/3、13勝４敗、防御率３・01。中５日で好投するなど昨年の26登板、１６２回、10勝10敗、防御率２・72から成長を見せた。斎藤投手コーチが菅野、マイコラスとの「３本柱」と称する活躍だったが、自己採点は厳しかった。

　今年は貯金を作りたいという思いでやってきましたが、防御率もだいぶ悪くなっています。大事なところで長いイニングを投げられなかった。そういうところがなければ１７０回が１８０回になる。手応えよりも課題が残った年でした。最後に失速してしまったので、失速しない体作りも勉強しながらやっていきたい。もっと高みを目指してやらないといけないと思いました

　ただ、収穫が多かったことは間違いない。振り返れば、開幕直後は制球に苦戦していた。４月15日の中日戦（ナゴヤＤ）は５回６四球５安打２失点。同29日のヤクルト戦（神宮）は６回７四球４安打無失点。ともに黒星はつかなかったが、苦しいマウンドが続いた。投げ急ぎによる上体の突っ込みなど、フォームを修正して６月中旬から３か月負けなし。自身８連勝と立て直したのは価値がある。

　最初は正直、きつかったです。気持ちの問題が大きかったと思います。マウンドで余裕がなくてストライクを投げられなかった。キャッチボールからフォームを模索しながらやって、徐々に結果に出るようになってきました。直球の質は昨年より良くなったと感じていますが、まだまだ良くなる。もっと質を高めていきたい。そうすれば球速も自然に上がると思います

　Ｇ球場の秋季練習では、ブルペンで直球主体に投げ込んでいる。11月は侍ジャパンの一員として「ＥＮＥＯＳ　アジアチャンピオンシップ」に出場予定。日の丸を背負う貴重な経験を、必ず来季につなげる決意だ。

　来年は防御率２・50以下を絶対にクリアしたい。防御率は投手の実力ですから。今年は野手の方に助けてもらった試合がたくさんある。大事な試合でもっと勝てるようになるためにも、全ての面でレベルアップしないといけない。シーズン最後の阪神戦がああいう形で終わってしまったので、来年は本当にやってやるぞという気持ちです。それを行動で示していけたらなと思っています

　時計の針が午後6時30分を指す頃､田口麗斗(かずと)(22)はテレビのチャンネルを変えた｡日本シリーズ第1戦が行われた10月28日｡画面には､パ･リーグ覇者のソフトバンクと戦うDeNAナインの姿が映っていた｡｢あの試合に勝っていれば､自分たちがこの舞台に立てたかもしれない｣｡胸の内に再び､悔しさがこみ上げた｡
　今季142試合目の本拠地最終戦､10月1日の阪神戦だった｡巨人が残る2試合に連勝すれば､DeNAの結果次第で3位の可能性が残る中､大事なマウンドを託された｡｢絶対に勝たなければ｣と強い気持ちで臨んだにもかかわらず､三回につかまる｡4安打を集中されて3失点｡四回の攻撃でチームが2点を返すと､代打を送られて交代となった｡
　13勝を挙げて投手陣の柱の一人へと成長を遂げた今季､5回持たずに降板したことは､そこまで一度もなかった｡チームは敗れ､クライマックスシリーズ(CS)進出を逃した｡失意に沈む巨人ナインが引き揚げる傍らで､若き左腕はグラウンドに視線を送ったまま､動かなかった｡｢この光景を､この悔しさを忘れないようにしたかった｣｡阪神の選手がハイタッチを交わす姿を､ただ見つめ続けた｡