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左翼は偽善者、保守派は正義

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だよね?

032

加えて歴代首相のほとんどが 国立大学卒の官僚出身か あるいは陸海軍大学卒の軍人出身― という長い間の不文律的な慣行を田中は破った。田中その人は苦学力行の庶民出身だった。
― そこに人気が湧き上がったのだ。
当の田中はあえてそのブームに乗って解散、総選挙を打とうとはしなかった。公明党の竹入義勝委員長に対しても
「年内解散は絶対にやらない」といい切った。
「解散、総選挙をやる理由がないじゃないか。日中国交正常化ができてみれば 外交上 与野党の争点はない。それにこれからの半年のあいだは経済が大事だ。じっくりと経済政策に身を入れるためにも 解散、総選挙で政治的空白をつくってはならん。
しかも自分としては公害、環境問題解決のために工業の平準化、また人口の過密、過疎をなくすために二十万都市の建設……これをやりたい。これが日本列島改造論だ」
田中は日本列島改造論を語る場合、相手がだれであろうと熱っぽい口調になって速射砲のようにしゃべりまくった。
しかし すべては裏目に出た― のである。臨時国会を遅らせているあいだに― インフレーションが大きく昂進をはじめたのである。

033

全国に十の基幹都市をつくり それを要にしてさらに百の人口二十五万都市をつくる。そこに大学を置き 基幹産業を一つ立地すればいい。それも付加価値の高い知識集約型産業をね。企業としても安定的な労働力が得られれば地方に立地したほうが得策だよ。そうした産業があれば二十五万都市はじゅうぶんに生きていけるよ。
全国にいま衆議院の選挙区が百三十ある。この選挙区ごとに二十五万都市を一つずつつくると すべて車で三十分以内に通えることになるんだ。
日本にはいま五千万台近くの自動車があって 一世帯当たり一台以上の車を持っているわけだから 仕事場と住まいが三十分や一時間くらい離れていても車で軽く往復できる。仕事を終えたら三十分くらいでさっと家に帰る。その住まいの周りには豊かな水と緑がある。そこで浴衣に着替えて冷奴で一杯やり、女房や子供を連れて盆踊りに出かける。こんなことはけっして夢じゃないんだ。それができなかったのは合理性だけを追求してきた日本のエリート官僚や頭脳集団が人間の帰巣本能を忘れてしまったからなんだ。年寄りも孫も一緒に楽しく暮らせる快適な環境をつくること、これが私の国土政策の大目標なんだ。

034

資本力、融資能力のある企業が 列島改造の声に乗じ不動産業になだれ込んで、将来 工業用地、宅地として利用できそうな土地を投機的に買い占めはじめたことから地価が暴騰をきたした。
投機(スペキュレーション)インフレは土地からはじまって鉄鋼、セメントなどの建築資材、それら関連企業の製品にまでおよび出した。
「インフレは日本列島改造論が原因である」という野党攻勢が日ましに高まっていった。
大衆の心理が田中ブームから去るのにそう長い時間は要しなかった。むしろ大衆は
「解散、総選挙!」という野党の声に同調をはじめた。
ついには― 田中首相もそれに抗し切れなかった。臨時国会の末期、11月13日、田中内閣は衆議院を解散した。
明けて14日― 田中は起床したときから なにかいらだつものを自分でも抑え切れなかった。それはこの午後、党本部の総裁室に三百人以上の公認候補を呼んで その一人一人に公認証書を手渡すときまでつづいた。秘書が
「まだ見えていない候補者もおりますので しばらくお待ちを……」といったとき
「すぐにはじめる。待ってはおれん」
そう田中は怒鳴りあげた。

035

テレビ・カメラが向けられライトが点くと、いつもなら田中はタレント・シップをみせて笑顔になるはずなのが―
「おい、暑苦しい。映してくれるな」と不機嫌な大声を出した。
― 今日のおれは なぜこうも いらいらとしているのか……。
みずから省みるところがあった。
― 自分がとっていた方針……年内解散せずが崩れた。
時代、世論ともいえるものの巨大な力に負けたという意識が田中にあったからだ。
― 総理大臣というものの権力も こうも脆いものなのか……。
それとは逆に
― 総理として自分の所信を貫くためには この総選挙は負けられない一戦だ。
という自覚がいっそう田中を焦燥に駆り立てていた。
総選挙がスタートしたのは11月20日― 公示の日であった。

総選挙の投票は12月10日に行なわれ、その夜から即日開票区の開票結果がテレビ、ラジオに流されはじめた。
平河町の自民党本部の総裁室に田中は腰をすえていた。戦績について田中には自信があった。選挙戦のさなか 日本列島改造論をひっさげ、意欲的、積極的に全国を遊説し 彼なりの手応えを感じ取っていた。
― おれが幹事長のとき、三年前、佐藤内閣不評のときでも結果的には三百名は取れたのだ。

036

こんどは日中国交正常化、新政策、それに三か月もつづいた田中ブームと あのときよりも条件はよい。
ということも田中の自信を支えていた。
しかし― この47年12月総選挙は 田中の自信と期待を裏切るものがあった。
自民党は解散時297議席だったが 271議席へと転落した。この数字は結党以来最低のものであった。
渋い田中の表情を橋本幹事長がちらっとみやって、なかば独りごとのように
「無所属の当選者16名……わが党に入って287名にはなる」といった。
それでもなお解散時を十名下回る数である。
一方の野党は社会党が87議席から118議席へ、共産党が14議席から実質40議席へと躍進をとげた。中間政党である公明党は47議席から29議席へ、民社党は29議席から19議席へとたいへんな落ち込み方であった。
― 予想外な共産党の進出……
と田中は気の滅入るのをおおい切れなかった。共産党は24年の総選挙で35議席を獲得したのが過去の最大の記録だったのを、こんどはそれをゆうに突破したのである。
― 国会運営がやり辛くなる。
と まず田中はそう思った。
― そればかりではない。もっと本質的に……政治のあり方が難しくなる。

037

ふっと田中の脳裏に故川島正次郎副総裁の顔がほうふつとし、その川島のいった言葉が浮かび上がってきた。
「70年代の後半は自共対決の時代になる……」
そのときは軽く受け流して聞いていたが、いまになってみると
― 川島の言葉は的中していたかも知れない。
そう思われた。
― 挙党一致で政権を担当すべき時代だ。
という認識を田中は固めた。
第二次内閣を組閣するに当たって― 田中が首相官邸に福田赳夫を招いたのは12月14日であった。福田の顔をみるなり 田中はちょっと吃るような急きこんだ口調で
「君に入閣してもらいたい」といった。
角福の確執は― ある意味では薄れていた。
「協力は惜しまんが……」と福田は前置きして
「ポストは軽いところがいい」と答えた。
― 三木副総理、大平外相、中曽根通産相は動かせまい。それに見合うポストを求めれば田中が苦慮する。友情に似た思いやりからであった。もうひとつ 福田は
― 激務でないところにいて政局全般を凝視したい。
― 共産党との対決……。あの異質の反民主主義的政党がどのように出てくるのか よく見極めたい。
という意識があった。
「わかった」と田中は十二分に福田の意のあるところを察してそういった。

038

第二次田中角栄内閣は47年12月22日発足した。

首相― 田中角栄、副総理・環境庁長官― 三木武夫(留任)、法相― 田中伊三次、外相― 大平正芳(留任)、蔵相― 愛知揆一、文相― 奥野誠亮、厚相― 斎藤邦吉、農相― 桜内義雄、通産相― 中曽根康弘(留任)、運輸相― 新谷寅三郎、郵政相― 久野忠治、労相― 加藤常太郎、建設相・首都圏整備委員長・近畿圏整備長官・中部圏開発整備長官― 金丸信、自治相・国家公安委員長・北海道開発庁長官― 江崎真澄、官房長官― 二階堂進(留任)、総務長官・沖縄開発庁長官― 坪川信三、行政管理庁長官― 福田赳夫、防衛庁長官― 増原恵吉(留任)、経済企画庁長官― 小坂善太郎、科学技術庁長官― 前田佳都男
副総裁― 椎名悦三郎(留任、椎名派)、幹事長― 橋本登美三郎(留任、田中派)、総務会長― 鈴木善幸(留任、大平派)、政調会長― 倉石忠雄(福田派)

039

総選挙が終わり首班指名の二日ほど前、私は大平からよばれて私邸にいった。大平の長兄が選挙区の香川から上京していた。私は
「共産党の宮本顕治が『田中内閣はいつでも倒せる』と豪語しているらしい」
といった。選挙で田中の金権体質が明らかになった。共産党はここを衝くぞ とみたからだ。大平は私の顔を見ながら長兄に向かって話をするように
「来年は外国へは行かない。安保条約と内政のつながりをみてゆく。窮すれば通じるというじゃないか。『別の原則』が働いているからな」
といった。大平特有の間接話法だ。
私は「田中がまた大平に何かいったな」と直感したが深くは追求しなかった。外相が外国へ行かないということは意味深長だ。大平の言葉の意味は「『来年は内政の方も見ていてくれ、どういうことになるかも判らぬから』と田中はおれにいったよ」ということであった。
12月22日、特別国会が開かれ 会期は来年5月20日までの150日間で通常国会の性格も兼ねた。衆院議長は中村梅吉が選ばれ 第二次田中内閣がスピード組閣で発足した。
私は「実務者内閣だな」と思った。奥野文相(無派閥)、斎藤厚相(大平派)など隠れ田中派の進出が目立った。

040

田中伊三次は石井派を代表し 長谷川峻などを閣僚候補として推薦しに官邸へ行ったが田中首相は認めなかった。田中(伊)も粘り 最後には「私だけでも入閣させて下さい」と本音を吐いて五年ぶりに法相の椅子を得た。それを見ていた二階堂官房長官は「他人を押しのけてまで……私にはああいう真似はできない」と思った。
万年大臣候補と言われた久野忠治もようやく入閣した。久野は40年の日韓国会が紛糾したとき衆院議院運営委員長(当選七回)だった。事態収拾のため辞意を固めた船田中議長は 久野に「誰にも言わんでくれたまえ」と頼んだ。久野はバカ正直にそれを守った。そのため佐藤首相や田中幹事長にさえ突然の議長辞任劇となり 二人は久野を怒鳴りあげた。この件が祟り その後 佐藤内閣で六回行われた組閣、内閣改造で 久野は当選を続けていながら閣僚の声がかからなかった。佐藤はダメなものはダメという行き方であった。衆院当選六回、参院当選三回が初入閣の目安だった頃の話である。
久野は当選十回になった。田中首相は敗者復活を認め 久野を戦略ポストの郵政相に迎えた。

041

田中内閣ができた時、いよいよ入閣だと思った。田中総理本人が私に建設大臣をくれると言っているのだから、これは間違いない。ところが元帥こと木村武雄さんが「オレを大臣にしてくれないと、次の選挙で落ちてしまう」と田中さんを口説き、建設大臣を持っていってしまった。結局、建設大臣は次の解散、いわゆる「日中選挙」の後までお預けになってしまった。
この時代の建設大臣は今と違って予算がたくさんあったから、非常に楽しかった。世に言う列島改造の真っただ中である。迎賓館の改修や、中央高速道路の未開通部分の工事着手、隧道を掘ったり、橋をかけたり、とにかくいろいろなことをやった。全国の市町村には私が手がけた仕事が必ず残っている。それが十年以上もたって結実し、竣工式に招かれたりしている。「花咲爺さん」の気分を十分に味わわせてもらった。
建設大臣としてのやり方も保利先生をまねたところがある。保利先生が建設大臣の時、私は建設委員会の筆頭理事を務めていた。ある日「保利先生、私の郷里にある身延山にひとつお参りに行きましょう」と持ちかけた。保利先生は本願寺の門徒だから、日蓮宗の身延山とは宗旨が違う。

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